昭和でもあるまいし…令和に「野外上映会」！？その意外なワケとは

Chu! PRESS

2024.08.30

福島県双葉郡浪江町では、毎年夏になると映画の野外上映会が開かれているという。去年は、休校となった小学校の校庭で、若者がジャズプレーヤーを目指す物語「ＢＬＵＥ　ＧＩＡＮＴ」が上映され、町の内外から多くの人が訪れていた。「昭和でもあるまいし…」という声が聞こえてきそうだが、この野外上映会が開かれているのにはワケがある。

芝生で映画を楽しむ

浪江町は、２０１１年の東日本大震災と原発事故の被災地。事故のあった福島第一原発のある双葉町の北隣の町だ。一時全町避難となったが、いま避難指示の解除が進み、徐々に住民の帰還が進んでいる。しかし、震災・原発事故から１３年という長い月日が流れた。多くの住民が避難先での生活を確立する中、かつてのコミュニティは戻ってはいない。そんな中、戻った住民、県内外に避難した住民、さらには新たに住み始めた住民と交流をしてもらおうというのが、この野外上映会の狙いだ。

実行委員会のみなさん（右から２番目が代表・東あすかさん）

この上映会の仕掛け人は、なみえコミュニティシネマ実行委員会代表の東あすかさん。東さんは同じ県内・郡山市の出身で、双葉郡の高校に通っていた。震災当時は山梨の大学に通っていたが、友人も多い双葉郡周辺で「なにか力になりたい」と浪江町での暮らしを始めた。

地元のグルメなど、出店も並ぶ

かつて浪江町など双葉郡内では、野外上映会が持ち回りで開かれていたという。それをヒントに交流人口の拡大にもつなげようとこの上映会が始まった。今は有志とこのプロジェクトに取り組んでいる。去年の上映会には、故郷の味を思い出してもらおうと「なみえ焼そば」など出店もならんだ。夜の野外上映会を前に集まった人たちは、地元の味を楽しみながら、思い出話に花を咲かせていた。その様子を見て東さんは「この上映会を続けていく」、そう心に誓ったという。

県内外からたくさんの人たちが

実行委員会では、ことしも９月１５日に野外上映会を開催する。町内の請戸（うけど）漁港で、日本を代表するアニメーション監督　新海誠監督の「すずめの戸締まり」を上映するという。漁船のミニクルーズなど、故郷を懐かしむイベントも多く用意されている。開催まで残り２週間ほどしかなく準備に忙しい東さんだが「何か力になるのが、自分への約束だから」と笑顔で話してくれた。

日暮れが上映の合図。町にかつての賑わいが戻ることしの上映会も間もなくだ。

Chu!PRESS編集部

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